1章:ファーストコンタクト

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「ぐっ! ははは! なにそれ! 純がぁ!? 女、弄るって! はははは! ないない! 俺じゃないんだから。それは、ないよ!」 げらげらげら、と弟・真が笑う。息も絶え絶え、苦しそうだ。 彼は完全に兄の性癖を知らないらしい。え、弟も知らないの? めっちゃ仲良さそうだけど。っていうか、弟にすらそんなこと知られてなくて、怖い。すっごい怖い。どれだけ隠すのうまいんだ…。残念ながら、私には丸わかりだけど。 だけどもう一つ分かっていたのは、この手のタイプは絶対に敵に回してはいけない。 たとえば被害に遭っても、間違いなく周りは信じてくれないのだ。一番近づいてはいけないのは、兄・豊臣純と言うことが分かった。まぁ、もう絶対に近づかないと思うけど。とりあえず、よく覚えておこう。 副社長と目が合うと、副社長はにこりと笑った。 「びっくりさせたかな? ごめんね」 (ナンデ、わかったのかな?) ―――こんなとき、心が読めるって便利ですね! 私はくるりと身をひるがえす。もう帰る。絶対に帰ることにした。 「す、すみません! 酔っちゃったみたいで! もう帰ります!」 「送るよ」 「ひっ…! け、結構です!」 兄の手をすり抜け、道端にいたタクシーに乗り込む。「お願いします! 早く出してください!」と変態に遭遇した時に幾度となく吐いたセリフを告げ、タクシーは出発した。 (あぁ、よかった。逃げ切った) そう思ったが… 世の中、いや私の『変態ホイホイ』体質は、そんなに甘くはなかった…。
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