お願い

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 そう言うとまた男は笑った。  『苦しそうな笑い』、望は気の毒に思った。  知らないところでこんなにボロボロになって、  それでも笑って見ず知らずのために働いてる彼らがとても不憫だと。  それを知らずにのうのうと生きてる事が、とても申し訳なく感じた。  「おっと! すません。  自分語りになってしまいましたね。  どうぞ、をおっしゃって下さい」  「……じゃあ一つ。  神の世界の皆さんの職場環境が、今よりずっと良くなりますように」  男は目を丸くした。  そんな願いをした人間なんて見たことが無かったのだろう。  あまりにも衝撃な出来事に違いなかった。  「ホントに……ホントにそんな願いで良いのですか?」    「一番が必要なのは、きっと皆さんです。  私じゃなくて」  すると男はポロポロ泣き出してしまった。  望は大人が目の前で突然泣き出して動揺していたが、  それが嬉し泣きだと察し、少し安心した。    「……ありがとうございます!!!  なんて心の優しい……このお返しは必ず致します!」  ようやく涙が収まった男が立ち上がり、  頭を下げながら言う。    「私は今回の報告をしに神の世界に戻ります。  それでは、お邪魔致しました!」  そう言うと男は一瞬で望の目の前から消えてしまった。  ここでようやく望は、  この男はホントに神の世界から来たんだと確信した。  なにせ一瞬で消えたのだから。  最後の最後で瞬間移動という  とんでもない技を繰り出されて  驚いた望だったが、しばらくじっとした後、  自分の部屋に戻った。   寒いハズなのに、何故か不思議と体が温かかった。    
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