隈とスーツの男

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 「突然お伺いしちゃってすいません!  貴方様が……上田 望さんですね」  「うわっ?!ビックリした、えっ、あ、ハイそうですけど」  玄関を開けると、真っ白いカバンを持った  見知らぬスーツの男が立っていた。  しかし望が驚いたのは男の顔だ。  信じられない位大きな隈が出来ていたのだ。  一瞬顔にパンダのメイクをしてるのかと思ったほど。  「この度は誠におめでとうございます!  貴方様は第7777777回信仰向上キャンペーンの対象者に選ばれました!」  パンダ隈の男はニコニコとした笑顔でそう告げる。  望の頭にはハテナが浮かぶ。  そんな懸賞に応募した記憶がこれっぽちも無かったのだ。  そもそも懸賞なんて絶対当たらないと思っている望が  応募するなんて、天と地がひっくり返ったり  リンゴが木から重力と反対の方向へ垂直にすっ飛んでいく位  あり得ない事だった。    「あのぉ……何かの間違いじゃないですかね?  私そんな懸賞に応募した覚えないので」  何かの手違いだと思った望はやんわり断って帰ってもらおうと思っていた。  あわよくばこの人に早く仕事を終わらせて寝てほしかった。  本当に隈が酷過ぎて心配だったのだ。  「イエイエ! 確かに貴方様が対象者です。  まぁ、詳しい事は立ち話もアレなんで中でご説明しますね」  「あっ、あぁぁちょっと! 勝手に入らないでください!」  望の制止も空しく、男はそのまま家の中に入り  少しキョロキョロ家を見渡すと、  リビングの方へスタスタと行ってしまった。  変な人だったらどうしよう、私危ないんじゃないかな、  と一瞬慌てた望だったが、決めつけるのも良くないと感じ、  一応用心しつつもリビングに向かう。  中学3年生の女子にしては警戒心が無さ過ぎる望である。  
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