秘密を持つ夫

4/4
前へ
/18ページ
次へ
「美穂、もしかしてでいいんだけどさ」 「どうしたの」 「会社に連絡してくれてたりしないよね」  そうか! やっぱり今日はお仕事だったんだ。 「ごめんなさい。気が動転してて全然気が回らなかった」 「美穂も今日は出社だよね」 「ああー」  もう頭を抱えるしかない。本当に私は何もかも駄目である。 「夫婦揃って、無断欠勤かぁ。なんて言われちゃうんだろうね」  私とは違って、楽しそうに笑っている。 「職場結婚なのに、揃って休みを取ろうとしないし、俺たち仮面夫婦って陰で言われてるの知ってた?」 「知らなかった」 「実はそういうのもあって、心機一転したいな、と思ってたんだ。家族の話だけじゃないよ」  だから気にしないでね、と苦笑いを浮かべる。  自分の弱みを見せたから、私の出方を伺っているんだ。下手なことを言えば、この人は永遠に元には戻らないかもしれない。 「子どもがほしくないんじゃなくて、自分に自信がないの、それと」  他にきっと好きな人がいるんだと思ってた、なんて言えない。  私が最愛の人だなんてそんなはずはないって、強く強く思い込んで。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

68人が本棚に入れています
本棚に追加