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「美穂、もしかしてでいいんだけどさ」
「どうしたの」
「会社に連絡してくれてたりしないよね」
そうか! やっぱり今日はお仕事だったんだ。
「ごめんなさい。気が動転してて全然気が回らなかった」
「美穂も今日は出社だよね」
「ああー」
もう頭を抱えるしかない。本当に私は何もかも駄目である。
「夫婦揃って、無断欠勤かぁ。なんて言われちゃうんだろうね」
私とは違って、楽しそうに笑っている。
「職場結婚なのに、揃って休みを取ろうとしないし、俺たち仮面夫婦って陰で言われてるの知ってた?」
「知らなかった」
「実はそういうのもあって、心機一転したいな、と思ってたんだ。家族の話だけじゃないよ」
だから気にしないでね、と苦笑いを浮かべる。
自分の弱みを見せたから、私の出方を伺っているんだ。下手なことを言えば、この人は永遠に元には戻らないかもしれない。
「子どもがほしくないんじゃなくて、自分に自信がないの、それと」
他にきっと好きな人がいるんだと思ってた、なんて言えない。
私が最愛の人だなんてそんなはずはないって、強く強く思い込んで。
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