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覚醒した夫
「良かれと思ってしていることが実は裏目なんじゃないかって、一巡したんだ」
にじり寄ってきて、私は肩を垂直に押され、ソファに無理やり座らされた。
お尻から沈み込んで身動ぎできない私を跨いで、顔を近づけてくる。
「見ないでほしそうだったら見て見ぬふりするし、言われたくなさそうだったら言葉を飲み込んでる」
震える私の頬に鼻筋を滑らせながら、言葉を発し続ける。
「それがそもそもの誤解を生んでいることに気付き始めた」
遅かったよね、と直に耳孔に吹き込むみたいにして言い放った。
「怖い? 怖いよね。だって、美穂は俺のこと無害だと思ってるから」
追い詰められてしまったけど、どうやってこの状況を打開すれば良いのか分からない。昔飼っていた猫の尻尾を踏んでしまって反撃されたことを思い出した。
「ねぇ、今別のこと考えてるでしょ。よく聞いて、俺ね、そういうことされるの嫌いなんだ」
嫌いなんて言葉、彼の口から出たのは初めて。
「俺を美穂の中で、男にしてよ」
切ない色香に当てられて、噎せ返るような情欲が湧き上がったのを感じた。
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