帰り道

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帰り道

 仕事を終えて帰ろうとしているのを見て上司が私の行く手を阻む。また無駄話かと思いながら仕方なく上司の話に付き合う。  やっと開放されたと思ったら時計は18時を過ぎた頃だった。30分もここで無駄話をしてしまった。  朝、雨が降っていたので傘を片手に会社を出る。今日は一日中雨予報だったはずが結局昼頃には雨は止んでいた。晴れているのに傘を持っていることに少し違和感を感じながら空を見上げる。  空は少し薄暗くなっていて、もっと早く帰る予定だったのにと思いながらとぼとぼと帰路につく。  しかし途中で見覚えのある姿を見つけて足を止めた。  薄暗いから視界がはっきりしない。必死に目を凝らす。 「おかえり」  そう言って微笑む目の前の人物は紛れもなく私の大好きな人だった。 「え、なんで?」 「会いたくなったから会いに来ちゃった」  フフッと笑うその顔を見て私もつられて笑う。二人で家まで歩き出す。 「今日晩御飯何?」 「何が食べたい?」 「うーん、何がいいかな」  彼はそう言って腕を組んでいる。 「何でもいいよ」 「じゃ、カレー」 「前もカレー食べたじゃん」  そう言ったら何でもいいって言ったじゃんなんて怒られた。確かになんでもいいとは言ったけどそれは違う。 「だってお前の作ったカレー美味いし」 「え?そう?」 「まぁお前が作ったのなら何でも美味しいけど」 「分かったよ、そんなに言うなら特製スペシャルカレー作ったげる!!」 「ヨッシャーーー!」  そう言って思いっきりガッツポーズする彼が可愛くて愛おしい。思わず頬が緩む。 「ねぇ」  私がそう言って立ち止まると少し先を進んだ彼が少し振り向く。 「好きだよ」  すると彼はそのまま私の手をぎゅっと握った。 「俺も好きだよ、大好き」  そう言ってにっこりと笑った。  あぁ、こんな帰り道も悪くない。
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