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「かっこよかったよ、男なら惚れたね」 「そうかよ」 すっかり夜になりネオンが眩しい駅裏の歓楽街。不釣り合いに自転車で二人乗りで周りを見渡す。 「で、名前聞いたら 舞 ってだけ答えて あんたんちに入って行ったから私てっきり 舞の家かと」 「それいつの話だよ」 「一週間ぐらい前。 あぁ、でも舞紙袋持ってまたすぐ出ていったから。何だったのか気になってたんだよね。お礼もしなきゃなぁなんて思ってたんだけど...今日パパとご飯食べる約束しててさ、この辺歩いててたまたま見つけたのよ」  この辺 って飲み屋ばっかじゃねぇか 思わずツッコもうとした言葉を飲み込む。 「いた!」 麻実が叫んで指差す先には『club ALiCE』と書かれた看板。その奥、店の路地裏に男女の人影が立っていた。 キャバ嬢らしく髪をあげ白いドレス姿の少女にホストのような出立ちのスーツの男が怒鳴っている。 「もういい加減にしてよ、舞ちゃん。 そんな態度じゃお客さん怒るの当たり前だろ、ちょっと抱きつかれたくらいで何なんだよ」 舞 と呼ばれた少女は紛れもなく  ほたると名乗った少女だった。 「聞いてんのかよ」 そっぼを向いて腕を抱く少女はきつく唇を噛んだ。 「だいたいその手袋なんだよ。 他の女の子達にも言われたろ、遊びでやってんじゃねぇんだよ。 客に気分よく飲ませるのがお前の仕事だろ」 少女の態度にイラついているのか、口調が荒くなる。 「さっさと謝れよ。 何ならクリーニング代体で払え。」 そう言って少女の腕を掴んだ。 少女は思わず男を投げ飛ばしてしまった。 「てめぇ、調子乗ってんじゃねぇぞ」 尻もちをついてしまった男は怒りまかせに少女を殴り付けた。 ゴミ箱に倒れ込み、派手な音を立てる。 ドレスの胸ぐらを掴んで上体を起こすと男は続ける。 「親もいねぇ、家もねぇって奴に飯食わして稼げるようにしてやってるってのに何なんだお前。お前みたいな価値のねえ奴、体売るか野垂れ死ぬかしかねえんだよ」 罵声を浴びせ、もう一度殴り付けようと拳を上げた。 それを掴み、見覚えのある青年が男の動きを止める。 「行け!」 叫ぶと同時に麻実が少女の腕を引っ張り上げた。呆然と少女は麻実に引かれるまま駆け出す。 「ちょっと待て、なんだお前ら」 男は仙寺を殴り付け後を追おうとする。 仙寺はそれを羽交い締めで抑えると振り向いた少女を怒鳴りつけた。 「馬鹿、早く逃げろ」 じたばたと暴れて腕が抜けた男がもう一発仙寺を殴り付け、慌てて少女の後を追ったが通りに出ると見失ってしまった。
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