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祠も泣き出しそうな目をしながら別れの言葉を伝え、三人は一度、病室を出た。
仙寺と祠は建物内のコンビニへ飲み物を買いに行き、硯はスタッフルームに報告を入れ
自分の机に腰を下ろした。
体全体で大きく息をする。
うなだれたまま思わず額に手をあてた。
気を遣って職員は誰もいなかった。
泣くような歳じゃない。
人の死に困惑するようなことももう無い。
どこかで線引きをしてしまうようになった。
仕方の無い事だ。何にでも限界はある。
それでも....
「やっぱりもの悲しくなるものだよな..」
天井を仰ぐ。
故人がふよふよ浮きながら様子を見に来ていそうな気がしたからだ。
気を取り直すようにもう一度静かに息を吐く。━━━━━━と、廊下を人影が通りすぎて行った。
見覚えがある。 少女のようだった。
静かに立ち上がり、入り口から通路を覗き込む。しかし、そこにはもう人影らしきものは無かった。
「...ほたる..ちゃん?」
呟くとほぼ同時にナースコール。
祖父の部屋からだった。
祠と仙寺が待つ病室に看護士と駆け込む。
思わず看護士は悲鳴を上げた。
ベットから体を起こし、
目を丸くしているのはまぎれもなく数分前に別れをすました相手。
「何事だ。大きい声出して」
懐かしい祖父の声。
死んだはずの祖父が生き返っていた。
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