一分でも、一秒でもいいのです(とある求婚の一つ)

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あなたはなぜ 私の求婚を断られたのですか あなたは私を愛しておられるではないですか 私もあなたを愛しております なのになぜ拒絶されたのですか ああ、いえ あなたが言わんとすることは分かっております 聞かずとも分かります あなたはその 病におかされた体で 残り少ない時間で 結婚をするべきではないと そう思っているのでしょう いいえ いいえ 私の話を聞いてください 私があなたに望むことはありません 何もありません 本当です 甘い言葉はいりません 贈り物は不要です 子供もいりません クリスマスは一人でも祝えます あなたといることで 喜びを増やしたいとも 悲しみを半分にしたいとも思いません あなたがいなくなって 老いて死するまでの長い時間を 独り生きることも怖くはありません 結婚とはなんでしょうか 愛する者同士が永遠を誓うことでしょうか 永遠とはなんでしょうか 十年? 百年? 千年? 死が二人を分かつまで? 愛は時が経てば消えるのですか 死ねば愛は消えるのですか? 私の願いはただ一つ あなたと共にいたいのです あなたと共にいたいだけなのです 一年でもいい 一月でもいい 一日でも 一時間でも 一分でも 一秒でもいい あなたと共にいたい それだけなのです 勝手でしょう? 身勝手でしょう? ですけど私には他にできることがありません 死にゆくあなたにできることが他にありません だから私にください あなたと共に生きる権利を私にください そう あなたは無力な存在ではないのです それを知ってください いいですか あなたは無力ではありません これほどまでに私が必死になるのは あなたが私を突き動かすからです あなたが私を動かすということは あなたには力があるということです たとえ痩せ細っても ベッドに伏していても あなたには 途方もない力があるのです それを理解できれば あなたは病に打ち勝てるはずです あなたはとても強い人です 私はよく知っています ……よく知っています、よく知っていますとも 私をあなたのそばにいさせてください 今日からでもそばにいさせてください お願いします お願いします 結婚してください ああ……神様…… 私の愛を試さないで…… 愛する人を奪わないで……
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