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「ねぇ、ひよちゃん。」
移動教室の時、七海が声をかけて来た。
あたしは黙って七海の方を見る。
七海は、苦しそうに笑っていた。
「わたし、あんまり頼りないかもだけど、悩みがあるなら、言ってね。
無理にとは、言わないから。」
教科書を握る七海の手に、ぎゅっと力が入る。
……悩み。
「うん。」
返事だけ、した。
そして、また前を向く。
すると、前から飯塚さんがやってきた。
「ちょっと装飾品は禁止よ、梅田さん。」
なんか注意されたけど無視してすれ違ったら、飯塚さんはわざわざあたしの方に駆け寄って来て、あたしの目の前に回り込んだ。
ああ、一体何。
「どいて、飯塚さん。」
「どいてじゃないわよ、平然と無視してんじゃないわよ。」
飯塚さんはふしゅーっと鼻息荒くこちらを見返す。
面倒な、人。
「ごめん。じゃ。」
「じゃ、じゃないわっ、装飾品!!!!!
私、風紀委員!!!!今、梅田さんのこと注意してるのよっ!!」
注意…
あたしは、そっと下を向く。
「うん。じゃ。」
「はあ!?会話!!!言葉のキャッチボール!!
注意されてるくせに何事もないようにしないでくれるかしら!?
このブレスレット!!学校に余計な装飾品はつけちゃダメってあなた知らないの??
って、これ、」
キラン、と眼鏡が光った飯塚さん。
その手が、あたしの腕をがっちり掴んでて、露になる、ブレスレット。
ブワッと、全身の毛が逆立つような、そんな感覚が体を駆け巡った。
触るな、
サワルナ。
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