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「ただいま…」
家に着くと、兄貴が玄関まで出てきた。
「ひよ!お前また連絡もなく遅く、……ひよ?」
兄貴が、訝しい顔をしてこっちを見てる。
そして、あたしの顔を覗き込んできた。
「ひよ、なんか、あった?」
「…遅くなって、ごめんなさい。」
「は!?おま、え、謝るって、」
今度は、酷く驚いてる。
ぼんやりと、兄貴の顔が目まぐるしく変わるのを眺めて、
…部屋に、行こ。
「ちょっ、ひよ、話終わってねぇ、ひよ!」
…ぱたん。
****
次の日。
朝、洗面所で歯磨きをしていると、兄貴がやってきた。
そして、あたしの腕を掴む。何だろう。
「なに、」
「何じゃねぇよ、お前どーしたわけ?
気持ち悪りぃよ、目は虚ろだし妙に素直だし、気になるだろうが、なんかあったなら言え。」
兄貴は、必死な顔であたしを見てる。
歯磨き、まだ途中なのに。あたしは口の中の泡を吐き出して、口をゆすいだ。
「おい、ひよっ、」
「何もない。離して。」
何を、そんなに騒いでるの?
兄貴は顔を歪めた。
「ふざけんな、お前自分の顔鏡で見ろよ、腑抜けてんだよ、…ん?」
あたしの手首のブレスレットを見た兄貴。
キラリと、パープルの石が光る。
「ひよ、こんなのつけてたっけ?」
兄貴に、ブレスレットについて触れられた瞬間、警戒心が、溢れだした。
バッと兄貴の手を振り払って、兄貴を睨む。
「触らないで、ほっといて。」
ブレスレットに、触れないで。
これは、大事なものなの。
触れないで、
……触れるな、触れるな!!
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