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あたしは、ないよ。
ぼーーーっと瀧本を見上げていると、瀧本は、くっと、唇を強く噛んで。
「俺があるからちょっと来て!!」
あたしを、無理矢理教室から連れ出した。
ああ、めんどう、何なの…
****
つれてこられたのは、人気のない廊下。
瀧本はピタッと立ち止まると、あたしの方を振り返ってきた。
「…大丈夫、なわけ?」
そして、唐突に何の脈絡もなく会話を開始する。
…大丈夫って何が。
「何のこと。瀧本に心配されるようなことなんて何もない。」
あたしが淡々と言い返すと、瀧本は「ん?」と顔を歪めて、それから頭をおもむろに掻いた。
「…何もないって、昨日泣いてただろっ。
何、俺の前で泣いたことなかったことにしたいとか、そういうの?」
昨日、泣いた。
あたし、そういえば、泣いた。
「もういいの、あれ。」
「は?でも、」
「瀧本じゃない人が、助けてくれるもの。」
大津くんが、お話、聞いてくれるの。
楽にしてくれるの。
それだけ。
瀧本の目はみるみる大きく見開かれた。
「俺、以外、」
この人、何を驚いてるの?
「だから、話すことない。」
あたしがもう一度同じことを言うと、瀧本は一瞬言葉を失って、「でもっ、」と食い下がった。
「俺の家の問題なんだから、俺の家に相談する方が…っ、ひいばあちゃんに言えばなんとかしてもらえるかもしれねーしっ、
ていうかちょっと待って、梅田、関係ない人に俺たちのこと話してるわけ!?」
瀧本が、喚いてる。
ああ、
ああ、
あ、
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