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「ほっといて、これに触らないで!!!」
バッ!!!と、飯塚さんの腕を振り払った。
飯塚さんは驚いて後退りをする。
「ちょっと梅田さん、それ、」
「ほっといてってば!!!取り上げないでよ!!!」
触れないで、触れないで、
触れないで
『肌身離さず持っとき。
それは、日和ちゃんだけの特別な御守りやさかい。』
これは、あたしの大切なもの。
あたしの、願い。
「ひよちゃん!!!」
七海を置いて、あたしは教室へ向かって走り出した。
もうやだ、
疲れた、責めないで、触れないで、
考えたくない、
助けて、助けて、助けて、
頭、からっぽだ。
****
「あらら、今日も来てくれたん?」
気付けば、大津くんの神社に来ていた。
夕方で赤く色付いた空にカラスが哭いて、翼を羽ばたかせる音が静かな神社でやけに響く。
「考えたくない、の。」
ポツリと、あたしが言った。
鳥居にもたれた大津くんがクスッと笑う。
「ええよ、日和ちゃんの望むままに。」
あたしの、望むままに。
大津くんが、あたしの手を取った。
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