15匹目!!

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「仕方ないだろっ、犬の血の力が強くなってきて、だんだんそうなったんだよ!! 笑うな草食動物!!! っ、 ………それに、」 瀧本くんは、ここに来てちょっと視線を落とした。そして、切なそうに眉間に皺を寄せる。 「…犬にとってのご主人様っていうのは、自分にとって、一番大事な人ってことで、 っ、 仕方ねーじゃん、 好きなんだからそーなるだろっ!!!」 あっ…… 瀧本くんは真っ赤な顔で、キッパリと言い切って。 なんか、笑ったのが申し訳なかったな。 「ごめん…」 僕が謝ると、瀧本くんはツーーンッ。 こう言うところがぜんっぜん可愛げないよね、この駄犬めっ。 瀧本くんは「ていうか、」と口を開いた。 「犬の血が無かったとしても、梅田がくんなって言ってきたら、俺は動くのを躊躇うよ。」 つまり、ひよちゃんの嫌がることは、本当にしたくない、と。 瀧本くんにとって、ひよちゃんって大きな存在なんだなぁ… 僕は犬ほどの忠誠心がある一族じゃないから、なんだか、瀧本くんの話をきくと不思議な感じ。 瀧本くんは腕を組んで僕をジッと見てきた。 「で、ちょっと卯月に訊きたいんだけど、お前、課題考査の時、梅田に抱き付いたくせにすぐ離れたじゃん? あれ、何かあるわけ?あるなら教えて。今回のことに関係してるかもだし。」 瀧本くんはこう言って口元に手を当てる。 瀧本くん、よく覚えてたね。 「あれは、まあ僕も血が反応してるってことなんだけど、……なんか、離れなきゃってなったの。 ひよちゃんに抱き付いた時、本能的に近寄ったら危ないって、そう感じたの。」 「危ない?」 瀧本くんは不思議そうに聞き返してきて、犬には分かんない感覚か。 「ほら、僕、瀧本くんの正体を見破ってたでしょ? 肉食動物は天敵だから察知できるって言ったよね? で、瀧本くんなんかは危なくないって分かるから平気だけど、分かんないときは、離れなきゃってなるの。 …ひよちゃんは、離れなきゃってなったの。」 肉食動物に対するものと、同じ反応。
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