画像付き完全版【福の神のお使い・2】お社の小さな首。

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 (あかとき)しずかに寝覚めして  思えば涙ぞ抑えあえぬ  はかなくこの世を過ぐしても  いつかは浄土へ参るべき 52110a7b-755a-4923-9337-d58b486d96dd  高野聖は突然、今様(いまよう)を唄い出した。  それは仏の存在への想いを流行歌にしたものだった。 「……どういう意味なん……?」 「(あが)では(あが)の値打ちは分からん」 「値打ち……」 「どうせいつかは消える身や。欲もって生きよんのもええよし」  高野聖は俯いて自分に言い聞かせるように呟くと、シマオの目を見て話を続けた。 「お前の舞はな、他の時見とらんから外しとったらあれやけど、(あが)で思とるよりええよ」 「……え?」 「"そこの神さん" も、降ろしよるんちゃうけ。えべっさんだけじゃなくよ。行った先の神さん。その方がより、ようさんの人を救えんのやろよ」  シマオと条介は黙って聞いていた。 「ほいだら、どんな神さんの顔にも見える方がええ。人形の顔は凝らん方がええよし。……あ」 「あ?」 「さっき、俺は鏡の事を話しよったけど……俺が笑ったのが神さんの首に映るんやなくて」  高野聖は力の抜けた笑顔で続けた。 「お前のえべっさんが笑てるけ、俺も笑ったんかもしれんよ」 「え? え? 何?」 「お前のえべっさんはよう笑てるいう事よし。胸張って舞わいてよ! じゃ、そろそろ俺は行こけ」 7f88b39b-2466-487e-a47e-bba26be405e7  その時、最初にえびすかきの二人に「キヨメ役をしろ」と伝えた村人がやってきた。
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