画像付き完全版【福の神のお使い・2】お社の小さな首。

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「これ、採れたから持っていき」  村人は、籠に入れて持ってきた栗を差し出した。 「え、いいん? ありがとう……」 「わしらが出来ひん事、神さんの使いのお前らは、やってくれるからな」 「あ。実はあの首は……」 「いや! いい!」  村人はグッと体を後ろに下げて、両手でシマオの言葉を遮った。 「言わんでええ」  その言葉には "穢れ" には触れたくないという気持ちが、垣間見えた。 「……分かった」  シマオは目線を落として、一歩後ずさった。 edd0d94b-6cdc-4c3d-9a16-b8944189588a 「あ、そんで村のキヨメらな、土砂崩れした道なおして帰ってきたわ。もう次の村にもこれで行けるで」 「え……?」  村人は笑顔で続けた。 「わしもそやけど、この季節になったらどこの村でも、えべっさん来るて待つやろ? そやから間に合うように急いでんで」 「……そうなん?」 「えびすかきを待ってる村は、この先にもぎょうさんや。道塞いだままやったらバチ当たるわ。その福、待ってる村全部に届けてもらわな」  シマオは胸がジンと熱くなった。 5321bde3-97b3-4243-a6de-f12bb7759dc7 「お前らは神さんの使いやからな。で、神さんの通る道きれいにすんのはキヨメの仕事や。ほなな。気ィつけて」  村人はそう言うと、一度だけ手を上げて去っていった。 「そうやったんか……」  自分たちのために、行く道を拓いてくれていたのか。  シマオは遠ざかる村人の背中をじっと見ながら、呟いた。 「……そやな。行かな」 22a7dec6-5e4b-4aca-9c26-09c33e8f64ea 「おう。行こか。次の村に」  条介は目線を上げたシマオに、穏やかにそう言った。 「あんたにもハイ。この栗、分けようや」  離れて見ていた高野聖の側に寄り、条介は栗を渡した。
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