画像付き完全版【福の神のお使い・2】お社の小さな首。

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「えべっさまー!」 「こっちこっちー!」  村の境界を守る道祖神の前を過ぎると同時に、遠くから子ども達の呼ぶ声が、シマオと条介(じょうすけ)の耳に届いた。 「見えた見えた。お迎えやな♪」 「嬉しなるなあ。ほんま子どもは可愛いで」  シマオと条介は摂津国の戎社(えびすのやしろ)から、福の神のえべっさまの神札である「御神影札(おみえふだ)」を配布しながら、木偶(でく)人形を舞わして福の神のご神徳を運ぶ傀儡師(くぐつし)。  14歳の新米傀儡師であるシマオは、3歳年上の条介と共に1年ぶりの村を訪れた。 0376b643-555d-4ada-9bc9-343fb0f2abdf 「何日も前から待っててんで!」 「はよお社に行こ!」  この時代の庶民にとって、年に1度訪れる「えびすかき」は単調な毎日に変化を与える存在。独特の頭巾姿にたっつけ袴。神の使いである彼らはその姿が変わっている事もあり、子どもたちにとっては憧れだった。 「ひっぱらんでもええって! みんな元気にしてたか?」  子ども達に囲まれながら、賑やかに村の鎮守の神を祀るお社を目指した。  この村の鎮守の神のもとにある大きなご神木が見えた。いつもそのご神木の下で、木偶人形を舞わしていた。 80109525-dd51-42a7-9cbc-71248d383ee2 「やっと着いたなー。ちょっと休も」 「えー!」 「いや、休ませてや。山超えてきてんで……」  目を輝かせてまとわりつく子どもたちと歩いていると、お社から少しだけ離れた鳥居の下で、数名の村人が立って何やら話しているのが見えた。 「なんやろ?」  シマオと条介が立ち止まると、そこにいた村人が二人に気づき声を上げた。 「お前ら、ちょうどええ時に来た! あそこにある首、埋めたってくれ」 「……首?」  シマオは歩みを止め、眉を潜めた。  
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