17人が本棚に入れています
本棚に追加
「えべっさまー!」
「こっちこっちー!」
村の境界を守る道祖神の前を過ぎると同時に、遠くから子ども達の呼ぶ声が、シマオと条介の耳に届いた。
「見えた見えた。お迎えやな♪」
「嬉しなるなあ。ほんま子どもは可愛いで」
シマオと条介は摂津国の戎社から、福の神のえべっさまの神札である「御神影札」を配布しながら、木偶人形を舞わして福の神のご神徳を運ぶ傀儡師。
14歳の新米傀儡師であるシマオは、3歳年上の条介と共に1年ぶりの村を訪れた。
「何日も前から待っててんで!」
「はよお社に行こ!」
この時代の庶民にとって、年に1度訪れる「えびすかき」は単調な毎日に変化を与える存在。独特の頭巾姿にたっつけ袴。神の使いである彼らはその姿が変わっている事もあり、子どもたちにとっては憧れだった。
「ひっぱらんでもええって! みんな元気にしてたか?」
子ども達に囲まれながら、賑やかに村の鎮守の神を祀るお社を目指した。
この村の鎮守の神のもとにある大きなご神木が見えた。いつもそのご神木の下で、木偶人形を舞わしていた。
「やっと着いたなー。ちょっと休も」
「えー!」
「いや、休ませてや。山超えてきてんで……」
目を輝かせてまとわりつく子どもたちと歩いていると、お社から少しだけ離れた鳥居の下で、数名の村人が立って何やら話しているのが見えた。
「なんやろ?」
シマオと条介が立ち止まると、そこにいた村人が二人に気づき声を上げた。
「お前ら、ちょうどええ時に来た! あそこにある首、埋めたってくれ」
「……首?」
シマオは歩みを止め、眉を潜めた。
最初のコメントを投稿しよう!