画像付き完全版【福の神のお使い・2】お社の小さな首。

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 首は小さかった。 「……赤子なんか? なんで首だけになってんねん……」  犬にでも喰われたのか。それにしても血の痕もなく、散らかっていない。  ただ、そこにころりと落ちている。  更に条介は、近付きながらも違和感を感じていた。 78f650ff-ebc5-4221-a0e7-ef1effa86c5a  この時代、人の亡骸が路上にある事は稀ではない。それに "キヨメ" として何度もそういったものを扱ってきた。  だがこの小さな首には足りないものがあった。  いつもなら必ず漂っている死臭が、全くなかった。  近くに寄って条介は確認し、ゆっくりしゃがんでこう言った。 「……これ……首ちゃうで」 「え?」  村人たちがその場から去った後、ぽつんと一人だけで立っていたシマオが聞き返した。 「ちゃうって。来てみ。いや、首は首やけど……」 「何なん……?」  シマオも躊躇しつつ近づいた。 「作りもんの "首" や」 「つ、作りもん……?」  条介はそっとその丸いものを手にすると、目を丸くさせてそれを見ながら、シマオの方に差し出した。 「木……やんなあ。木で作ってんねん。何やこれ……」 「木? これが木?」  二人はしゃがみ込んで、手にした小さな首を驚きの表情で見ていた。  片手の平に乗りそうなその小さくて丸い首には、目鼻口が彫刻されており、肌は柔らかに見え、今にも表情を変えそうな気さえした。 「ちょう、そえ俺のよ」  突然、後ろで声がした。  二人は驚き、小さな首を手にしたまま声のする方を振り返った。
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