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首は小さかった。
「……赤子なんか? なんで首だけになってんねん……」
犬にでも喰われたのか。それにしても血の痕もなく、散らかっていない。
ただ、そこにころりと落ちている。
更に条介は、近付きながらも違和感を感じていた。
この時代、人の亡骸が路上にある事は稀ではない。それに "キヨメ" として何度もそういったものを扱ってきた。
だがこの小さな首には足りないものがあった。
いつもなら必ず漂っている死臭が、全くなかった。
近くに寄って条介は確認し、ゆっくりしゃがんでこう言った。
「……これ……首ちゃうで」
「え?」
村人たちがその場から去った後、ぽつんと一人だけで立っていたシマオが聞き返した。
「ちゃうって。来てみ。いや、首は首やけど……」
「何なん……?」
シマオも躊躇しつつ近づいた。
「作りもんの "首" や」
「つ、作りもん……?」
条介はそっとその丸いものを手にすると、目を丸くさせてそれを見ながら、シマオの方に差し出した。
「木……やんなあ。木で作ってんねん。何やこれ……」
「木? これが木?」
二人はしゃがみ込んで、手にした小さな首を驚きの表情で見ていた。
片手の平に乗りそうなその小さくて丸い首には、目鼻口が彫刻されており、肌は柔らかに見え、今にも表情を変えそうな気さえした。
「ちょう、そえ俺のよ」
突然、後ろで声がした。
二人は驚き、小さな首を手にしたまま声のする方を振り返った。
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