画像付き完全版【福の神のお使い・2】お社の小さな首。

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 そこに僧形(そうぎょう)の若者が立っていた。 b3450bf0-4064-4506-ad48-fea0afd6d21b  笠を被り、黒と白の装束。遊行(ゆぎょう)の僧というような出で立ちで、笠の下には涼しい目元とへの字口、それに黒い髪が見えていた。 「(ひじり)か……これ、お前のもんなんか?」  条介が立ち上がって聞き返した。  若い僧は、背の高い条介を見上げた。 「高野(こうや)蓮華谷聖(れんげだにひじり)よ。そえ朝にここに落としたみたいでよ」 「高野聖(こうやひじり)! これどこで手に入れたん?」  シマオも立ち上がって、興奮気味に詰め寄った。 「どこでて。そえは俺が作っちゃあよ」 「え」 「……自分で……?」  シマオと条介は目を見開いて、信じられないという表情で高野聖を見た。 「ど、どうやってこんなん作れるん……まるでほんまもんの首みたいやで……」 「木い、はつったらこうなるよし」  高野聖は淡々と続けた。 a4a306b1-3fc0-4a6a-ae87-a814d7f0ca1e 「昨日の夜にここで寝ててよ。暗いうちに出発しちゃあ、知だん間にまくれ落ちよったみたいでよ。探しに戻っちゃあよ」  返してくれと差し出した高野聖の手を、シマオが両手でがしりと握った。 「なあ頼む!」 「な、何よ……」  会ったばかりの変わった出で立ちの者に手を握られ、高野聖は後ずさった。 「俺のえべっさまの顔、作ってくれへんか……!」 「……俺のえべっさま? なんやそえ」  淡々とした高野聖とは対照的に、シマオは興奮に火がついていた。
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