17人が本棚に入れています
本棚に追加
そこに僧形の若者が立っていた。
笠を被り、黒と白の装束。遊行の僧というような出で立ちで、笠の下には涼しい目元とへの字口、それに黒い髪が見えていた。
「聖か……これ、お前のもんなんか?」
条介が立ち上がって聞き返した。
若い僧は、背の高い条介を見上げた。
「高野の蓮華谷聖よ。そえ朝にここに落としたみたいでよ」
「高野聖! これどこで手に入れたん?」
シマオも立ち上がって、興奮気味に詰め寄った。
「どこでて。そえは俺が作っちゃあよ」
「え」
「……自分で……?」
シマオと条介は目を見開いて、信じられないという表情で高野聖を見た。
「ど、どうやってこんなん作れるん……まるでほんまもんの首みたいやで……」
「木い、はつったらこうなるよし」
高野聖は淡々と続けた。
「昨日の夜にここで寝ててよ。暗いうちに出発しちゃあ、知だん間にまくれ落ちよったみたいでよ。探しに戻っちゃあよ」
返してくれと差し出した高野聖の手を、シマオが両手でがしりと握った。
「なあ頼む!」
「な、何よ……」
会ったばかりの変わった出で立ちの者に手を握られ、高野聖は後ずさった。
「俺のえべっさまの顔、作ってくれへんか……!」
「……俺のえべっさま? なんやそえ」
淡々とした高野聖とは対照的に、シマオは興奮に火がついていた。
最初のコメントを投稿しよう!