画像付き完全版【福の神のお使い・2】お社の小さな首。

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「俺は摂津の戎社から来た、えびすかきで……!」 「ああ。戎社の傀儡師か。知っとるよ」 「知ってる? じゃあ話が早い……あの木偶(でく)人形の首を作って欲しいねん!」  高野聖はへの字口のままシマオの顔をじっと見た。 「ちょう、手は離して」 「あ。はい。ごめん……ッ」  シマオの少し後ろで様子を伺っている条介と、その手の中にある木彫りの首をちらりと見て静かに続けた。 「……神さんよな。ほんな簡単に頼んでいいもんなんけ?」 「……そうやけど、でも」  シマオは紅潮した頬で食い下がった。 「ぬくもりが見えるねん……この首。首だけ見てこんなん思ったん初めてや。すごい……。なあ、ほんまお願いします!」  高野聖はため息をついた。 7690d6f5-5c65-4244-8847-0d102fed90e6 「えびすかきの傀儡は知っとる。でもお前の事は知らやん。先にお前の傀儡舞を見たいちゃあ」 「分かった。見せる」 「ちょい待って。シマオ、やるならちゃんとせなあかん。えびすかきの傀儡舞は神様事(かみさまごと)やで。自分勝手にやろうとすんな」  条介はそう言うと、手にしていた首を丁寧に高野聖に返し、シマオに預けていた自分の荷物に手を伸ばした。  条介から荷物を取られている時も、シマオは高野聖から目を離す事なく、ウンと一度頷くとお社の前に向かった。 9ee5cb6b-55a3-4a8b-a4ec-cd23db64b741  その場で(ひざまず)いてお社を見つめ、頭を下げた。 「神さん、ありがとうございます。今から舞わせてもらいます」  高野聖は返ってきた首を両手で包むように持ち、その姿を見ていた。
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