17人が本棚に入れています
本棚に追加
「俺は摂津の戎社から来た、えびすかきで……!」
「ああ。戎社の傀儡師か。知っとるよ」
「知ってる? じゃあ話が早い……あの木偶人形の首を作って欲しいねん!」
高野聖はへの字口のままシマオの顔をじっと見た。
「ちょう、手は離して」
「あ。はい。ごめん……ッ」
シマオの少し後ろで様子を伺っている条介と、その手の中にある木彫りの首をちらりと見て静かに続けた。
「……神さんよな。ほんな簡単に頼んでいいもんなんけ?」
「……そうやけど、でも」
シマオは紅潮した頬で食い下がった。
「ぬくもりが見えるねん……この首。首だけ見てこんなん思ったん初めてや。すごい……。なあ、ほんまお願いします!」
高野聖はため息をついた。
「えびすかきの傀儡は知っとる。でもお前の事は知らやん。先にお前の傀儡舞を見たいちゃあ」
「分かった。見せる」
「ちょい待って。シマオ、やるならちゃんとせなあかん。えびすかきの傀儡舞は神様事やで。自分勝手にやろうとすんな」
条介はそう言うと、手にしていた首を丁寧に高野聖に返し、シマオに預けていた自分の荷物に手を伸ばした。
条介から荷物を取られている時も、シマオは高野聖から目を離す事なく、ウンと一度頷くとお社の前に向かった。
その場で跪いてお社を見つめ、頭を下げた。
「神さん、ありがとうございます。今から舞わせてもらいます」
高野聖は返ってきた首を両手で包むように持ち、その姿を見ていた。
最初のコメントを投稿しよう!