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「では、どうすれば良いとお考えですか?」
下春は布都に言った。
「気比の郷は八十戸ほど。おそらく、兵力は百二十兵ほどじゃろ。騎馬隊を三騎馬中隊か四騎馬中隊さしむければ兵はたたけるが、兵だけでなく郷ごとたたいていておかねばならぬぞ」
一騎馬中隊は二十騎である。
「大倭の勢力を見せつけろと言うのか。父上」
と布都斯。
「そうじゃ。大倭の負担は増えるが、大倭の軍勢がいかなるものか、一度は噂を広めておかねばなるまい・・・」
と布都。
「では、軍船で遠征をとお考えですか?」
尾羽張が訊いた。
「布都斯、下春、一甫、尾羽張の四人は、それぞれ一騎馬中隊をひきい、ともに余部の郷へ行け。余部を大倭の上に任じて、かの地を大倭に組み入れ、気比を見知った余部の村人を使いに出すのじゃ。
いずれ大倭に組み入れる地じゃ。気比の返事を待たずに気比の地まで戍と烽を築け。
気比の地の沖合いに軍船が見えたら、狼煙を上げよ。そして、気比の郷へ行き、軍船を見せつけて交渉するのじゃ」
「誰が軍船をひきいるのだ?」
布都斯が不審な顔をしている。
「儂たちが、十五隻をひきいて行く・・・」
布都が佐久佐比古と乾那有、大足春を示した。十五隻ならひきいる兵は千二百兵である。
「なんと!」
布都斯は驚いた。
「布都様。遠征中は、誰が海辺の指揮をするのですか?」
尾羽張が訊いた。
「宇留賀を中心に春来、仁岐、速日
にさせる。そのように驚くな。昔の皆のように、いずれ、経験せねばならぬことじゃ・・・」
春来は下春の従弟で大足春の息子である。仁岐と速日は布都斯とひとまわり歳が離れた双子の弟である。
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