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「・・・皆、儂らの策を承知してくれるか?」
布都は、布都斯たちに決断させようとしている。
「収穫が昨年並み以上なら、余裕も生まれます。異存ないでしょう」
布都の思いを知って、下春は承諾した。
「わかった。尾羽張。騎馬隊の指揮者がしばらく代わると皆に説明しておいてくれ」
「わかりました。義兄上」
「そうしてくれるなら、儂らも助かるでのう」
と佐久佐比古も同意している。
「では、この旨を夏の上集えで皆に知らせ、秋に備えてもらう」
布都斯が言うと、布都の顔がほころんだ。
「そうと決まったら、早いが夕餉にしようぞ。皆、泊まってゆけ」
「はい」
「わかりました」
「そのほうがゆっくり酒を飲める。春奈。夕餉を頼む。すまぬが皆も手伝ってくれぬか」
布都が佐久佐比古や乾那有、大足春とともに下屋へむかった。
布都斯はその場を立って、広間東の開いた板戸から外を見た。
爾多郷も宍道湖も、静かに雨に煙っている。
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