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村人が水を汲んでもどると、布都斯は麻布を水に浸して絞り、八島野の額に乗せた。
「お前たちが、女と子供たちを気比の村へ行かせたのか?」
「いえ、気比がそのようにさせました」
「やはり、そうか」
「どう言うことです?」
「そなたたちが逆らわぬよう、人質にされたのです」
下春は水の壷を火のそばへ置いて言った。
「なんてこった・・・」
村人たちは呆然としている。
「お前たちを欺き、我が子に深手を負わせた気比の行いは、大倭の戒めに値する・・・。
気比は疑りぶかい。下春、一甫、策を練ろう・・・。この村に輿はあるか?」
「あります」
真一たちが村へ行けば、気比は真一たちが大倭の騎馬隊を討ったとみなし、女と子供たちを無事に帰すだろう。布都斯たちが行けば、使いが知らせたように、気比は条件をつけて大倭に帰属するのを拒み、真一たちと騎馬隊が行けば、気比は人質を盾に戦をしかけて来る。それらのことは下春も想像できた。
「真一。今のうちに、皆に、昼餉を食わせておけ」
一甫が真一に言った。
「従兄者たちの分もしたくする。食ってくれ。皆の昼餉を作れっ」
真一が村人たちに指示した。
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