第三章 死の様な森も雪降れば白く

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 同じ消火で溜まった泥と水を掻き分け、木造側から地下に入ろうとしたが、井戸の付近では瓦礫が入り込んでいた。そして、排水が完了し、瓦礫も取り除いて、やっと地下に入ってみると、三人は死んでいた。他の使用人は、火災のせいだと思っただろう。しかし、繁典は、原因が練炭である事に気付いた。 「地下室では、練炭を使用するなと言ってあった筈なのに、寒いのは可哀想だと、誰かが差し入れしてしまった」  俺が穴を覗いて唸っていると、チビ3が映像を飛ばしてきた。映像を見てみると、暗闇に立っている繁典がいた。 『……ここの若旦那は、付近の若い娘を連れて来ると、手籠めにしていた。手籠めにされた娘達は、妊娠し父親のいない子供を産み、普通に結婚する事が出来なくなった。それなのに、自分には若い妻がいて、子供が産まれた……』  その時生まれたのが久江で、久江の母親は子供を実家に残し嫁に行った。 『恨んでいた……憎かった。俺の妻も奴の子供を妊娠して産んだ……美しい娘に育ったが、見たくなかった……』  産まれた娘は、久江と姉妹のように似ていた。 『娘は嫁いで行って、孫を連れて来る……その子は、あいつにそっくりだった……』  繁典は、愛憎が入り混じり、複雑な感情に陥っていたらしい。 『死んで当然の奴だった……しかし、誰の罪にもしたくなかった』  そして、焼死体を探してくると、代わりに差し出した。地下は封印していたが、持ち主が変わってしまった。 『……もう過去にしたかった。だから、久江さんが見張っていた……それなのに……』  暁子がやって来ると、ここで死のうとした。繁典は、遠くから暁子を見張っていて、ここで死なれては困るので暁子を助けようとした。 『もう静かに暮らしていたかったのに……』  暖炉で焼身自殺しようとした暁子の手を引き、外に引っ張り出そうとしたが、暁子は咳き込んで窒息死してしまった。しかも、そこに素子がやって来たので、繁典は床下に隠れた。 『隠しても、隠しても……誰かが見つけにやって来る。もう疲れた……』  声が掠れて途切れると、周囲が真っ暗になったままの映像だけが残っていた。チビ3のライトを点灯させても、そこには暗闇しかない。
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