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「共同墓地か……」
山に近い森の中に、この土地の者が眠る共同墓地があった。その墓地は高台なので、もしかしたら別荘が見えているかもしれない。
本村の父親は、別荘だけではなく、この森も買い取っていた。それは、周囲の開発を避けた為で、その土地の中に共同墓地も入ってしまっていた。だが、無理に移動させようとはしてない。
そして、自然を守っているが、この土地の開発を止めているという面もある。
「善と悪は、簡単には決められないか……」
静かな森は、何も知らないようで、何でも知っていたように感じる。
「あ、日鋼丸が合図している!」
俺が日鋼丸の元に降りてゆくと、折れた枝の下に繁典が倒れていた。
日鋼丸は首吊りをしようとした枝を折り、繁典を落下させたらしい。繁典は落ちた衝撃で、動けなくなっていた。
俺が地面に降りると、繁典は俺を見上げて固まってしまった。
「ここが、天国だったのか……死なずに、助かったのかと思った……」
「生きていますよ」
繁典は俺の姿を見て項垂れると、手を合わせて祈っていた。
「……あの地下室には、誰かが入ってしまった……」
繁典は、華族を殺すつもりは無かった。防空棒の中で、生きていると信じていた。しかし、階段が水没し、木造側からも入れなかった。
「空襲がある日はいつも晴れだった……でも、帰ってみると、土砂降りになっていた。雨は火事を消してくれたが、地下を水没させた」
どうしょうもない奴だったと付け足しながら、それでも殺していい理由にはならなかった。
「罪を忘れた頃、暁子という娘がやって来た。暖炉で自殺しようとしていて、助けようとしたが、助けられなかった。地下を調べられたく無かった……」
暁子は病死となり、家の捜査は行われなかった。
「もう。終わりにしましょう」
「……そうだ、もう終わりにしたい。嘘などつかずに、ここで死んだと謝罪しておけば、こんな事にはならなかった……」
今からでも遅くないので、事実を公にし、謝罪すればいいのだ。
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