第三章 死の様な森も雪降れば白く

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「ん??これ、誰の手帳だ?」  繁典は伴典が聞いた事なども、自分の事のように書くので、主観が誰なのか分からなくなる。  少女は他にも、嫌いな祖母を山に生きたまま埋めた事や、怒られた先生の家に火を付けて殺した事も教えてくれた。少女には罪の意識が無く、死体が無ければ、誰も責めない、行方不明でいいのだと、笑っていた。 「少女が殺した人は、二十人近くいた……」  死体は主に山に埋められ、誰も見つける事は出来なかった。  そんな殺人鬼なのに、少女の姿は美しく、伴典を慕っていた。だが、駿が少女に恋をしてしまい、二人はやがて結婚した。 「伴典は、駿の妻の罪を知られたくなかったのか……」  死体が本当に埋められているのか分からないが、地下室が事実だったので、信憑性はある。  かなり、ややこしい事になってしまったが、この手帳も本村に渡しておこう。  駿の現在を調べてみると、数年前に亡くなっていた。駿の妻は画家になっていて、精密画を描いていた。それは、バラバラの死体をモチーフにしたもので、描く事で、殺しの衝動を抑えていたらしい。  その妻も亡くなり、一人娘も若くして亡くなっていた。もう子孫はいないので、殺人鬼の血を引く者はいない。 「この別荘は壊す!絶対、壊す!面倒だ!」  俺が車のシートを殴って暴れていると、警官がドアを開けて飴をくれた。しかも、棒付きの飴でかなり大きい。俺が、飴の攻略方法を考えていると、チビ1から画像が届いていた。  画像を見ると、暁子の遺書で、葬儀は必要無いという言葉と共に、どういう死に方がいいのか書かれていた。 『夏草は私の背よりも伸びて、美味しそうな程に青々しい。私は夏草に倒れて死に、体は虫に食われ、骨になったらススキの野に埋もれたい』  だから、葬儀にはススキの穂が添えられていた。 「自分の死に方を選べると思った所が、傲慢だな……」  遺書には、暁子の事を雛ちゃんと呼んで慕っていた本村に、ちゃんとさよならを言いたいと書かれていた。何故、雛ちゃんなのか分からないが、本村が慕っていた事は分かった。  俺が暁子の遺言を眺めていると、今度はチビ3が伴典の遺書のようなものを送ってきた。
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