第三章 死の様な森も雪降れば白く

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『獣のように四つん這いになり、やはり獣のように咆哮しながら、犬畜生の交尾を真似ていた。心が畜生なので、こんな声で鳴くのだろう。心底、心が醜いのだと軽蔑した』  この文を書いた者は、伴典を嫌っていたらしい。 『この犬畜生の男は、尻から劉様を受け入れ、その内臓を差し出した。この男、事前の知識が不足していたのか、その行為を知らず、殺される、死なせてくれと叫び続けた。だが、尻を割られた程度で、人は死なぬ。むしろ快楽を得て喜ぶ程度だ。この男も、一晩もすると声も出なくなり、劉様の動きに併せて息を吐く程度になった。そして、休んだ後には、顔を上気させるようになった』  書いた主は、伴典を軽蔑しつつも、よく観察していて、写真に納めた。 『この男、劉様に尻から内臓を洗浄され、泣きだした。男が泣くなど、滑稽極まりなし。洗浄して腸から出てきた物体は、糞尿にあらず。劉様の入れた精であった。それは昨晩の行為の証で、劉様は笑顔で見ていた』  そして洗浄が終了すると、再び、劉は伴典の中に差し込み、内臓に自分のモノを納めた。 『ここは地下で、夜も昼もない。劉様は、自分の形になるまで、そこから出さないとおっしゃった。すると、この男は、自分で腰を動かし劉様を歓喜させた』  三日目になると、記録していた男らしき人物も、伴典を認め始めた。伴典は三日目になっても恥じらいを忘れず、凛とした佇まいであったらしい。 『二日目の夜が終ると、この男は濡れた手拭いで全身を拭き正座して頭を下げた。乱れていた事が嘘のように、部屋は静まり、空気さえも澄んだ。劉様は眠っていらしたが、この男には、この男なりの矜持があったらしい。劉様と離れて、壁際で眠っていた』  そして三日目の晩は、更に激しさを増し、それは獣の交尾以外ではないと書かれていた。 『三日目は最初から激しい』  劉は伴典を手に入れようと必死で、自分の思いの丈をねじ込んだ。その歪んだ愛情を、やっと伴典も理解した。優秀な駿という兄は、病気があっても両親に愛され、皆に尊敬されていた。だが、劉は軽蔑され、諦められた。その悔しさと虚しさを、劉は伴典にぶつけているのだ。
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