第三章 死の様な森も雪降れば白く

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 本村は、現地警察に呼ばれてパトカーで署に行き、夕刻になって車に戻ってきた。別荘は現場保存のために使用できなくなり、別にホテルを予約したらしい。 「夏目……こんな所で眠っていたのか……」 「本村?ご苦労様」  どこにも行けず、更に場所が無かったので、車で遊んでいるしかないだろう。俺が怒ろうとすると、本村は俺を持ち上げて抱き締めた。 「少し冷えたな……」 「そうか?」  毛布を被っていたので、寒くは無かった。むしろ、本村の方が冷え切っていた。  本村と車の外に出て、別荘を見上げてみると、様々な思いがこみ上げてきた。短い時間であったのに、この別荘に十年くらい住んでいたかのような気分になる。 「夏目……この別荘、取り壊ししようか?」 「そうしよう。ここはロクな事がないよ……」  本村は俺を抱き寄せると、頭の天辺に何回もキスしていた。 「あの地下室は、親父も見つけられなかったそうだ」 「????どうして???ドアを開ければ階段でしょう???」  その階段が無く、地下倉庫に繋がっていたらしい。 「どういう事だ?」  どうも、警察が撮った現場の写真を確認してみると、塞がっていた地下階段に雨水が流れ込み、徐々に土砂を流していたらしい。そして天井の土砂が崩れ落ちて、又、雨水で流された。 「雨水で、あんなに綺麗に通路ができたのか?元は塞がっていたのか?どうなっていた???」 「全く不明だ……」  しかし、他に要因が見つからないらしい。  地下倉庫、薪置き場の排水も流れ込んでいて、結果として埋まっていた階段が現れ、通路が出来たと考える他ない。 「親父は、元の持ち主に息子夫婦を探して欲しいと頼まれていた」 「そうか、本村の親父も、やっと、依頼完了か」
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