第三章 死の様な森も雪降れば白く

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 本村の父親は、息子夫婦を探し続ける代わりに、格安で別荘を買い取ったらしい。 「商人だな。でも、何と言うのか、本村の親という感じがする。ん????遺体を渡して死んだ事になっていたと聞いたが、信じていなかったのか……」 「そうなるな」  本村は車のエンジンを掛けると、俺を助手席に移動した。 「いいホテルを取れたか?」 「母さんが、詳細を聞きたがってね、一時間ほど電話で捕まった。その後で、休んでいいと許可が出て、ホテルを予約してくれた」  素子は、休業中の小さなホテルを予約していて、貸し切りにしてくれたらしい。従業員は料理長と仲居、支配人の三人だけ来ているという。 「休業中なのにいいのか?」 「本館が改修工事中になっているけど、別館は使用できる」  元々小さなホテルで、別館といっても三室しかなかったので、休業中になっていたらしい。 「……もう、何かの事件とかはないよな?」 「多分ね……」  折角の休日なので、ゆっくりとしたい。揃えたキャンプ道具は無駄になってしまったが、美味しい料理が食べられるのならば、それでもいい。 「事件が次の事件を呼ぶような……奇怪さがあったな」 「そうだね……夏目は俺の知らない事を知っただろう?後で、情報交換するか?」  本村の持っている、検死報告の情報は欲しい。 「わかった」  繁典の手帳も持ったままだったので、それも本村に渡しておこう。 「一個、謎が増えてしまったけどね……」 「やめてくれ……もう、謎は要らない」  伴典と劉の情事を撮影し、記録として残した者は誰なのであろうか。
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