第三章 死の様な森も雪降れば白く

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「元気だよ」 「ぎゃあああ!!鯉が喋った」  俺が池に落ちそうになると、ハクが翼を出して羽ばたいていた。すると、チビ2も出てきて、目を光らせて周囲を照らしていた。 「夏目ちゃん、確認しました。ジェーンはいません」  チビ2は鯉を確認すると、俺の首に巻き付いた。 「この子は、最終兵器か何かか?飛んでいるし、翼はあるし、蛇まで飼っている!!」 「それに近いものです」  返事をしていたのは料理人で、外国人であった。名札を見ると、やたら長い名前で、略してジェーンだったようだ。名札の下に、マジックペンで、略してジェーンと付け足されていた。 「しかし、可愛いな……天使みたいだ。でも、イタズラしそうな目をしているな……」 「イタズラレベルではないのですよ……」  本村は冷静に俺に近付くと、頭を殴ってから片手に抱き込んだ。 「痛い……」 「イタズラするな」  俺は鯉を見ていただけで、イタズラなどしていない。俺が頭をさすっていると、ジェーンが手を伸ばしてきた。 「夕食が出来ましたので、ご案内します」 「和食?どこの国の料理?乳は入っていない?」  ジェーンは、俺の翼を撫ぜると、チビ2にキスしていた。 「本物の翼みたいだ。本物の天使なのかな……こんなに綺麗な子供は初めてみた。今は夜で日射しが無いのに、日射しに透けてしまいそうだ」 「透けていない……ちゃんと迷彩服を着ている」  迷彩なので、森に溶けてしまいそうと言われた方が納得する。 「天使など信じた事が無いのに、見ていると祈りたくなる。この子の未来が、優しい光で溢れているように願ってしまう」  優しい光というのは、具体的に思い浮かばない。太陽光は、俺にとっては怖い存在で、日焼け止めは必需品になっている。だから、太陽光は優しいとは言えず、サンマを焼いていると、サンマに同情したくなるくらいだ。じりじりと焼かれる事の、何と辛い事か。 「光は嫌だ。暗黒がいい」 「ホイルの包み焼きか?」  ジェーンもおかしな発想の持ち主らしい。
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