第三章 死の様な森も雪降れば白く

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「目もガラス玉みたいだ……三枚におろして活け造りにしたいくらいだ……」 「ここに、危険な人がいます!!」  俺が手を上げていると、ジェーンは笑いながら部屋に入り、料理の前で降ろしてくれた。 「夏目ちゃんには、白身魚のコースで、まずはサラダを食べてみてね」  料理は和食風になっているが、和洋折衷になっていた。サラダには隠れてエビが入っていて、まるで森で昆虫を探しているような気分になる。 「ふふふふふ」  俺の目に見つからないエビなどない。 「笑うと、天使にしか見えない……刺身で食べたい」  ジェーンは、俺をじっと見ると、涎を拭いていた。 「夏目は、そんなに可愛いモノではありませんよ。噛みつかれる前に、離れてください」  俺は猛獣でなない。 「しかし、ジェーンは変人でも、料理はおいしい」  俺が本村を見ると、本村は日本酒を飲んでいた。 「俺も飲む!!!」  俺はテーブルの下を潜り、本村によじ登ると、猪口にかぶりついた。しかし、中身は空で、ほんのりと味がしただけであった。  俺は諦めずに徳利を捜したが、本村は逆さまにして振ってみせた。 「一口くらいいいでしょう?」 「ダメ!大人になるまで、禁酒だ」  ならば、俺の前で美味しそうに飲まなくてもいいだろう。俺が睨んでいると、本村が嬉しそうに笑っていた。 「夏目、食事が終ったら風呂に入ろう……月見風呂だ」  酒が飲めないのは、この体なので仕方が無い。
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