第三章 死の様な森も雪降れば白く

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「もしかして、ジェーンはジェーンの生まれかわりではないのか?今、妙な親近感を覚えた!」 「ジェーンは死んでいないから、生まれ変わっていないでしょう……」  そうだった。鯉のジェーンは家で留守番をしていて、今頃、テレビを見ながら寝転がっているだろう。ジェーンは鯉なのだが、テレビも見るし、インターネットで通信もできる。  俺が思い出して、ジェーンへ通信しようとすると、本日の営業は終了しましたとアナウンスが流れていた。 「ジェーン……」 「何だ?」  本当は、このジェーンはジェーンではないのか。疑ってみたが、板前のジェーンは人間のようだ。 「ジェーン、次の料理をお願いします」 「了解」  ジェーンは、自家製のパンを焼いていて、野菜は地元農家を回って買い付けてきていた。 「鮭のマリネと、エビと大豆のポタージュ。ほうれん草とバター」  ほうれん草とバターを、どうしろというのだ。すると皿が熱々になっていて、バターが溶けてほうれん草に絡まっていた。 「あの……バターは乳製品……」 「それは本村様の分で、夏目ちゃんのは、こっちです」  呼び方が、様とちゃんを行き来するが、気にしない事にしておこう。ジェーンは俺用には、ほうれんそうと燻製魚とオリーブ油にしていた。 「今、メインを持ってきますよ」  メインは何なのかと待っていると、天婦羅と白いご飯が出てきた。 「パンを焼いていたのではないの?」 「それは。朝食用です」  でも、ご飯はとても美味しく、粒が艶々している。それは輝く程で、茶碗を持つと、明かりに掲げてみた。 「艶々!」 「ありがとうございます」  ジェーンは頭を下げると、ニッコリと笑った。そして、隠していた一品を出してきた。
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