第三章 死の様な森も雪降れば白く

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「来たぞ!!厳戒体勢だ!!」  ジェーンはデザートの果物を持ってくると、俺を持ち上げ、膝に抱えて座った。 「ん???????」  俺は座り心地を確認すると、何だか懐かしい気分になった。 「ジェーン、君は誰だ?」 「……世羅が、自分の細胞を組み込み、遺伝子操作で作った子供ですよ。海外で作成され、世羅の命令で隠れて生きてきました。夏目ちゃんを、世羅の記憶と協力して、護ってきました」  世羅は自分の細胞を、幾体もの子供に分けて取り込ませ、記憶の一部として使用していた。その子供達は、成長すると本体を求めて集まり、この国や地下社会で生活しているという。 「ジェーン……もう、解放されてもいいでしょう。世羅はもういない」 「複製品ではなく、俺達はオリジナルを取り込んでいます。それは、魂の奥底で叫んでいて、夏目ちゃんを愛したい、千手様と世界征服したいと夢見る」  世界征服はしなくてもいい。  しかし、俺と千手への思いを取り除くと、生きている意味が無くなり、死にたくなってしまうという。 「俺達は生きる為に、欲している。そして、メンバーの半分は、千手様の元に行っています」 「残り半分も行ってくれ」  でも、全員が千手の元に行ってしまうと、本当に世界征服しようとした時に、反対する勢力が無くなってしまうらしい。 「残りの半分は、公安に行きました。俺は特例で、料理の道を歩んでいます」 「公安に、そんな奴らが来ているのか……」  その公安のメンバーが、合間に調べてくれた事は、駿の妻、花楓(かえで)は、結婚してからは殺人をしなかった。しかし、殺人狂で多数の人を死においやった。 「女性のシリアルキラーは珍しい」 「怨恨だったのですよ。花楓は、この世界に対し恨みを持ち、裕福な家庭、幸せな家庭を壊していった……だが表面上は正義で、悪を懲らしめるという事で正気の心を保っていた」  境界型の殺人鬼で、正気の時は気立ての良い娘でもあったらしい。
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