第三章 死の様な森も雪降れば白く

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「そうか……些細な恨みも重なってゆけば、殺人鬼を生み出す。警察や公安は、殺人鬼を生み出さないように、正義の鉄槌で鬱憤を晴らさせてやらないといけないな……」  正義は誰の為にあるのではなく、自分の為に存在する。 「そんな訳で、まだまだ夏目ちゃんを護らせてください」 「断る!」  ジェーンは笑うと、仲間に連絡を取っていた。 「ご馳走様!日鋼丸と風呂に入ってくる!」 「どうぞ」  本村は、まだジェーンと話したい事があるらしい。本村は酒を注文すると、ジェーンにも勧めていた。  俺は隣の部屋に走り込むと、その中央にある、闇の中に飛び込んだ。 「日鋼丸、一緒に風呂に入ろう!」  闇の中から目が出てくると、困ったように目が泳いでいた。 「嬉しいのですが、マスクを付けたままでもいいですか?」 「服を着ていなければ、いいよ」  日鋼丸に抱えられて、別館の露天風呂に行ってみると、それは川まで降りた先にあった。川にも山にも、光はなく、月が大きく見えていた。月のせいで、星がよく見えないので、俺は月をどかそうと手を延ばした。 「……花楓は、二十四人を殺しました……正義という名の、殺人鬼……そして、伴典さんが劉に蹂躙されている姿を見て、恋をした」  蹂躙の先に、理解や和解が出来るなど、華聯は微塵も考えていなかった。だが、伴典は劉の心を理解し、寄り添った。その姿を見た花楓は、伴典こそが自分の事を理解できる唯一の人だと思い込んだ。 「花楓は多重人格で、殺人鬼の人格を持っていた……」  だが、記録と写真を撮っていた者が分からなかった。 「日鋼丸、風呂に入ろう!」 「はい」
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