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どうやら勘違いだったようで、ほっと胸を撫で下ろし大和へ視線を戻すと、さっきまで閉じていたはずの目がばっちりと見開かれていた。
「おぉォォォ!おまっお前、いつ起きっ、いつ起きたんだよっ!」
「……今?」
こんなやりとり前もしたような気がする。……じゃなくて、こいつどこから起きてた?っていうか聞かれた?背中に冷たいものが流れる。一旦落ち着こう。
「どこら辺から……あー違う、ちょっと待て、えーっと、何か聞いた!?」
全然ダメ。無理。取り乱しすぎ。何かあったって誰でもわかっちゃう、これじゃ。
「何かって?」
怪訝な顔で大和が聞き返す。
あれ?セーフ?助かった!
「なんでもない!安心して寝ていいぞ」
そういってタオルケットを渡す。大和はタオルケットを受け取り、そのまま体を起こした。 あれ?寝ないの?と思っていると、大和が近づいてくる。なんだなんだと思っているうちに、俺は大和の腕の中にすっぽり納まってしまった。
「やまっ、大和?なん、なん、何すんだよ」
慌てる俺をよそに、大和の腕はしっかりと俺を抱く。
「行かない。周が行くなって言うなら、オレはどこにも行かない」
「え……」
「周が行くなっていうなら、ずっとここにいる。この町でずっと暮らす。絶対離れない」
途端に鼓動が早くなる。もしや、さっきの聞かれてた?俺が行くなって言うなら行かないって、本気で言ってるのか?
「大和、お前酔ってんの?」
「酔ってねーよ!」
勢い良く体を引き離すと、大和が俺の肩に手を乗せたまま、じっと見つめてくる。
「この目が嘘ついてる目に見えるか?」
顔はまだ幾分赤いが、その表情からは真剣な気持ちが伝わってきた。
「オレは、周がそう言ってくれるのずっと待ってた。周はいつもいつもオレに興味なさそうで、全然平気そうで、その度に傷ついてたんだぞ」
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