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「カヤちゃんが言ってたこと、本当だった」
そういってまた大和が俺にキスをする。
「周は大和が大好きなんだから、これは間違いないんだから、って」
次は頬に唇を押し付ける。姉ちゃんそんなこといったのかよ。
「敵わねぇな、姉ちゃんには。俺たちのこと一体どこまでお見通しなんだよ」
そう言っている間にも、大和からのキスの応酬は続いている。ぶちゅぶちゅと遠慮なく頬やら額やら鼻を吸う。
「ちょ、もういい加減にしろよ」
「なんでだよ。両思いなんだからいいだろ。今まで俺がどんだけ我慢してたと……!」
はいはい、わかりました。もう好きにしてくれ。
諦めて身を委ねると、それに気を良くした大和は俺を押し倒して馬乗りになった。
「ば、ばか!ここリビングだぞ!誰か起きてきたらどうすんだよ!」
「誰も来ないって、大丈夫大丈夫」
「待て待て!いや、そうじゃなくて……」
「なんだよ。ヤなわけ?」
大和は今にも泣きそうな顔で俺をじっと見つめる。泣きたいのはこっちだ。キスなんてしたの初めてだし、俺はもういっぱいいっぱいなんだよ。
「……俺は足りない。キスだけじゃ足りない。周が全部欲しいんだから」
大和の言葉に頭が沸騰しそうになる。全身が金縛りにあったみたいに動かなかった。
「全部だよ。全部くれよ。周の全部をオレにくれ」
その言葉は必死の懇願、というよりも誓いとか祈りだとか、そんな風に聞こえた。俺の全部をまるごと差し出すから、お前を全部くれ、といっているように聞こえた。まるでプロポーズのようだと思った。
「……いいよ」
全部やる。その代わり俺も全部貰う。大和の心も、体も、人生も。全部。
二人の甘やかな密約が、リビングで交わされた。誰にも知られることなく。静かに。
大和は俺に軽くキスをすると、首筋から肩の窪みまで順番に唇を落とした。これから何が始まるんだろう。不安と期待が入り混じった感情が俺を包み込む。
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