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ブゥンと最後の一振りをすると、扇風機のタイマーが切れた。時計の音と大和の荒い息遣いだけがが部屋中に響く。
「周……しゅう……っ」
このまま喰われるんじゃないかと思うような大和のキスに必死に応じる。息をするタイミングがわからない。
大和と自分の唇の端に細い糸が引かれる。大和がそれを舌先で絡め取る。その姿はまるで美しい獣のようだった。
「はぁ……周、可愛い。一生懸命で」
「なっ……俺はなぁ、初めてなんだよ!仕方ないだろ!」
どこで練習してきたのか、妙にキスの上手い大和に腹が立つ。勉強も運動も大和には勝てっこないけど、こんなことでも負けてるのが悔しかった。
「俺もだけど?」
きょとんとした顔で小首をかしげる。天然かよ……。怖い。もーこいつ怖い。
「は、初めてでそんな上手いのかよ……」
正直な感想をいうと、大和の顔がパーッと輝いた。
「えー何それ!周がオレを褒めるなんて珍しいこともあるんだなぁ」
なにやらご満悦な表情で、にこにこと笑っている。笑った顔は小さい頃のまんまだ。その顔につられて俺も笑う。
「あぁ、もうちょー幸せ……」
そういって俺の上に覆いかぶさる。次は何をされるのかとドキドキしながら待っていても、一向に動く気配がない。重い。ものすごく重い。
「大和……?」
なんとか上半身を起こして顔を確認すると、すぴーっと鼻息を立てて寝ていた。
「普通この状態で寝るかよ……」
かといって起こすのも忍びないし、寝顔が可愛いので許してやることにした。なんたって、明日からはずっと大和は隣にいるのだし、何も焦る必要はないんだから。
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