神様にお願い

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 なおも漫画を読み耽っている大和の隣に座る。すると大和は「はい、これ」とジーンズのポケットから簡易な袋を取り出した。  受け取って中身をみてみると、人間の身体に象の頭が付いたマスコットキャラクターのようなものが入っていた。象の頭部にキーホルダーの金具が付いている。 「なにこれ」 「神様」  またこいつは訳のわからないことを言う。もしかして、適当な事を言ってからかっているんじゃないだろうか。 「金運と幸運の神なんだって」  大和はそう言って大真面目な顔で大事にしろよ、と釘を指した。  手の中でチャラリと音を立てて神様が転がる。 「んで、今度はどこいってたわけ?」  大和から漫画を取り上げて聞く。まだ読んでんのに!という非難の声は聞かない事にした。  大和はバッグからカメラを取り出して、俺に手渡す。 「タイ行ってきた。良かったぜー。なんかみんな自由でさ、面白かった。綺麗なおネェさんに声かけられたと思って話してたら実は元お兄さんだったりとかさ」  その綺麗な元お兄さんらしき人と大和がカメラの中で笑っている。 「タイ語わかんの?」 「わかんねーよ。大体は英語。後はジェスチャーでなんとなく」  まるで当たり前のように言ってのけるが、普通にできることじゃない。  大和はどこでも、どんな場所でも生きていけると思う。言葉の壁なんて、大和にとっては簡単に乗り越えられる障害物リレーのハードルのようなものなのかもしれない。  生まれた日も対して変わらないのに、歩くのも喋るのも大和の方が早かった。こいつはいつも俺の半歩先どころか百歩以上先を歩いている。
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