神様にお願い

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 わざわざ家族にまでお土産を買ってきてくれたのか。あれで結構律儀な所があるんだよな。 「しっかしさぁ、その点どうだね、うちの弟君は。日に日にモサくなっていく。なにその眼鏡。だっさ」 「これはパソコン用の眼鏡なの!うるさいなぁ。用がないなら出てってよ」  いちいち小言が多いのが気に障る。これでまぁまぁモテるのが納得いかない。家での挙動を動画に収めて提出したい。 「はいはい、失礼しましたー。この分だと大和が先だね」 「何がだよ」 「彼女。あんだけカッコよかったらさぞかしもてるんじゃないの」  姉は不敵な笑みを浮かべながらドアを閉めた。 大和に、彼女。考えたことなかった。いつもどこかをほっつき歩いてて、大和を繋ぎとめるなんてそんなの誰にも出来ないって思ってた。彼女ができたら、大和は旅をやめるだろうか。  ガチャ、とまた無遠慮にドアが開く。ドアの隙間から姉ちゃんが顔を覗かせる。 「あんたさぁ、そんなの見てるなら一緒に行きゃいーじゃん。女々しいの」  それだけ言ってまたドアを閉めた。トントントンと階段を降りる音がして、そこでようやく気の抜けた溜め息が出た。  机に座り直し画面を覗く。パソコン画面に映る異国の地で、笑う大和を想像する。想像して、どうやってもそこにうまく自分の姿を投影できなくて泣きたくなった。  大和がくれた神様のキーホルダーを机の引き出しにしまった後、やっぱり思い直して家の鍵に付けた。
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