神様にお願い

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 ゼミの飲み会があった帰り道、酔いを冷ますために少し遠回りをして帰ると、道の先がやけに明るい。どうやら工事をしているらしかった。  こんな深夜までご苦労様です、と心の中で呟いてから「あっ」と思わず声を上げた。  中年のおじさん達の中に大和がいる。こっちに気がついた様子で大和がブンブン腕を振って近づいてくる。 「周!なに、どしたの、こんな時間に!」  大和を取り囲むおじさん達が一斉にこちらに目を向ける。若干の気まずさを感じつつも、問いに答える。 「飲み会の帰り。大和はバイト?」 「そうそう。やっぱ手っ取り早く稼ぐなら肉体労働だな」 「またどっかいくの?」  俺を置いて、と口先まで出掛かって、なんとか飲み込んだ。 「まだどこ行くかは決めてないけど。そのうちなー」  ふうん、と呟くと、大和がいない日々を思いだして少し寂しくなる。 「あ、こないださ、帰り際にカヤちゃんに会ったけど、すっげー美人になってねぇ?オレびっくりしたわー」  大和は五つ離れた俺の姉をカヤちゃんと呼ぶ。なんだよ、二人して。かっこよくなった、美人になったって。もう付き合っちゃえよ。 「顔はよくても性格きっついぞ」 「そうか?カヤちゃん優しいと思うけどなぁ」  それは、お前だからだよ、と心の中で悪態をつく。  五十嵐ー!そろそろ戻れー!と大和を呼ぶ声がする。大和はそれに気が付くと、またなといって足早に去っていってしまった。  それを見送ってからその場を後にすると、 「周ー!気をつけて帰れよー!」 という大和の声が背中越しに投げかけられた。  びっくりして振り返ると、大きく手を振る大和が隣のおじさんに小突かれているのが見える。  思わずぷっと吹き出してから、仕事に戻れ、と手で小さくジェスチャーをする。  大和が小さくピースサインをするのを見て、なんとなく幸せな気持ちになった。
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