神様にお願い

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 その日から、大和に会えない日が続いた。自分もテスト前で忙しいのもあったし、大和は朝も夜もなくバイトに勤しんでいた。  何をそんなに焦っているんだろう。頻繁に旅にでなきゃいけない理由でもあるんだろうか。大和の真っ暗な部屋をみては悶々とする。いつ起きているのか寝ているのか、そもそも帰ってきているのかさえわからない。携帯は相変わらず電源が入っていない。どうしてこんなに俺だけが、大和の事を考えなくちゃいけないんだ。何度振り払っても大和の顔が浮かぶ。  なんだか最近自分はおかしい。寝ても覚めても大和の事で頭がいっぱいだった。  学校から帰ると、大和が自室でくつろいでいた。くつろいでいる、というより完全にでき上がっていた。空のビール缶が5、6本転がっている。床にはポテチとイカの燻製、さらにそこには実の姉が仰向けで寝転んでいた。 「なんで俺の部屋で飲んでんだよ!うわ!ビールこぼれてるじゃん!拭けよ!」 「あ?こぼれてる?ウソつけよー」 「あ、おかえりぃ、しゅーくんの分もありゅよ?あれ?ないかな?あはは!わかんない!」  姉はこうなるともうダメだ。たぶん明日起きたら今日の記憶はほとんどなくなっているだろうと思う。 「姉ちゃん!起きろよ、部屋戻れって!!ここで寝るな!」 「あゆけないからぁ、たぶん、あゆけないからー。つれってってよぉ、ねむいよぉ」  ふざけんなよ!これだから!この姉は!!  大和も本気で寝に入っている。これは一人で運ばなきゃいけないらしい。っていうかうちの親はどこ行ってんだ?お願いだから早く帰ってきてくれ。  なんとか姉を部屋まで運んで寝かしつける。酒粕みたいな匂いの姉なんていらない。欲しい人がいたら熨斗をつけてくれてやる。  自室に戻ってはっとする。そういえば大和がいるんだった。  でかい図体の割りに寝方が案外可愛らしい。両手を股の間に挟んで小さくなっている。大和も姉ちゃんも酒弱いくせに飲みたがるんだよなぁ、と髪の隙間から覗く真っ赤になった耳たぶを見て思う。  頬をペチペチと叩くも、一向に目を覚まさない。
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