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「おい、大和。起きろ」
何回か肩を揺さぶると、ようやくゆっくりと目を開いた。
「家帰って寝ろよ。布団もってくるの面倒くさいんだけど」
半開きの目でうんうん頷く。聞いているのかいないのかわからない。
「カヤちゃん……?俺、寝ちゃってた?」
あくびをしながら目をこすっている。姉ちゃんじゃねぇよ。寝ぼけやがって。
「うぅ……カヤちゃん。……結婚したい」
はいはい、勝手に結婚でもなんでもしてくれよ。ていうかいつのまに姉ちゃんと大和はそんな関係になってるわけ?イライラする。酔ってこんなこと言う大和にも、黙ってた姉ちゃんにも。
ムカついてるはずなのに、なんでか胸がズキズキ痛む。もう本当に最悪だ。俺は一体何に傷ついてるんだ。
「カヤちゃん。結婚したい。オレ結婚したいよー」
「あぁもう!わかったから!すりゃいいだろ!ちょっと黙れよ!」
思わず声を荒げる。
「でもダメだよ。俺たち男同士だし。できないだろ?」
トロンとした目のまま眉が下がる。何いってんだこいつ。酔っ払い過ぎだろ。なんで姉ちゃんと大和が男同士なんだよ。
「お前しっかり――」
「周と結婚したい」
「……はぁ!?」
思わず耳を疑った。今なんて言った?聞き間違いか?言い間違いか?それともやっぱり酔っておかしなことを言っているだけなのか?
「カヤちゃん。オレ、周と結婚したい」
間髪入れずにそう言うと、大和はまたすぅすぅと寝息を立て始めた。
今のはかなりはっきり聞こえた。もし、もしもこれが本気だとしたら、大和が本音を言ったのだとしたら、これは、今のはプロポー……いやいや待て。そんなことあるはずがない。大和が俺と結婚って……いやいやいや。
ガチャと部屋のドアが開いて、母親が顔を覗かせる。
「ごめんね、遅くなって。町内会の集まりが長引いたわ。あら、やっぱり大和くん来てたのね。寝てるの?……それより、あんたなんでそんな顔赤いのよ」
母親に指摘されて、ようやく自分の顔が赤くなっていることに気が付いた。少しお酒飲んだから、とウソをついてなんとかその場を凌いだ。
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