わたしと専務のすごくヒミツの話

2/17
前へ
/17ページ
次へ
 だが――  ああ、いかんいかん、と思う。  このままでは、自分の妻をこっそり覗いている変質者だ。  気配を消していた京平が立ち上がろうとしたそのとき、のぞみが振り向いた。  うわっ、と声を上げる。 「せ、専務。  起きてたんですか……」  専務はよせ、専務は、と思いながら京平は側に行き、のぞみを見下ろすと、 「少し腹が減ったな。  なにか食べに行くか?」 と訊いた。 「あ、はいっ」 と笑顔で言うのぞみに、 「……今日からずっと、お前がおごれよ」 と言うと、 「ええっ?」 とのぞみは叫ぶ。  お金、足りるだろうか……という表情で青くなっている。  京平は一度奥の部屋に戻ると、通帳五冊とカードと印鑑を取ってきて、のぞみに渡した。 「うちの全財産だ。  今日からお前が管理しろ」 「きっ、緊張しますっ」 と硬い表情でのぞみは通帳を受け取っている。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1451人が本棚に入れています
本棚に追加