わたしと専務のすごくヒミツの話

7/17
前へ
/17ページ
次へ
  「のぞみ、今日こそ新婚初夜だぞ」 とリビングで夜景を背に腕組みした京平が言ってきた。 「いや、あの~、初夜ではなくないですか?」 と初夜は昨日では、と思いながら、のぞみが言うと、 「莫迦(ばか)め。  二人の初めての夜と書いて、初夜だ」 と言ってくる。  いや、少なくとも、『二人の』は何処にもない気がするんですが……と思いながら、のぞみがじりじりと京平から後退すると、京平はじりじりと前に出てくる。  いやあの……、なんとなく怖いんで……と思いながら、のぞみが更に後ずさったとき、京平が言った。 「ともかく、今まで待ったんだ。  今日は絶対――っ」  そう京平が言いかけたとき、京平のスマホが鳴った。 「……専務、鳴ってます」 「嫌だ」 「出てください」 「嫌だ。  会社からのような予感がする」 「そんな気がしますね、出てください」 「お前、俺をこの家から追い出したいのか!」 「いや、一応、私、貴方の秘書なんで」 と言うと、 「……わかったよ」 と言って、渋々、京平は電話に出た。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1452人が本棚に入れています
本棚に追加