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こんな恐ろしいゲームに巻き込まれるだなんて、一体誰が予想していただろうか。
翔介も、結も。あの葉琉でさえ、全く想像していなかったはずである。なんせその日、何か特別なイベントがあったわけでもなんでもない。よくある“修学旅行に行ったらバスごと誘拐された”なんてこともないのだ。何もない、普通の日だった。強いて言うならそう、翔介が妹の翔子と喧嘩していたところを、友人二人に見られてしまったというだけで。
「だから!何で駄目なのかって訊いてんの!」
翔子は母に似て、非常に気が強い女の子だった。一つ年下の中学一年生。放課後の廊下で言い争いをしている自分達はさぞかし目立ったことだろう。すぐ傍をちらちら見ながら通り過ぎていく生徒達の視線が、非常に痛く感じたのをよく覚えている。
彼女が怒った理由は単純明快だった。翔介が、こっくりさんをやりたがる翔子を全力で止めたからである。理由は以前、葉琉が“こっくりさんの類はやらない方がいい”ということを教えてくれていたからというものだった。
葉琉とは中学になってからの仲ではあるが、彼の聡明さと冷静な判断力には絶対の信頼を置いている。その葉琉が駄目というのだから、こっくりさんの類はやらない方が無難なのだ。問題は、何故“やってはいけない”のかを、翔介がきちんと理解していなかったからである。
「まさか、葉琉さんが駄目って言ったから!なんて言わないよね?」
「う」
「どうせそんなことだろうと思った!お兄ちゃんのそれ、盲信とか責任転嫁っていうやつだと思うんだけど!」
盲信している自覚はあるが、責任転嫁はちょっと違うんじゃないのか。そう言いかけた翔介を遮るように彼女は畳み掛けてくる。
「もし葉琉さんがやれって言ったことが間違ってたら、それを盲信した自分棚上げして“葉琉さんのせい”にするでしょ?そういうのが責任転嫁っていうの。私、自分の考えや判断に責任持たない男ってだいっきらい!」
翔子がやろうとしているのはしょうもない遊びだったが、どうにも彼女が一番怒ったのはそこだったらしかった。翔介が、“葉琉が駄目といったから”という彼任せの理由で、翔子がやりたがっている遊びを止めたからである。
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