<2・合縁奇縁>

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<2・合縁奇縁>

 気が強くて男勝り、の代名詞のような性格の翔子ではあるが。理詰めできちんと説得すれば、聞き分けるだけの理性もきちんと持ち合わせていることを翔介は知っていた。葉流が何故こっくりさんはやめた方がいいのか、を落ち着いて話すとそれなりに納得した様子で頷いている。 「降霊術の類いは、無闇矢鱈とやらないのが賢明なんですよ。浮遊霊なんてものは、そのへんをうじゃうじゃしてるものですからね。引っ掛かってきたら、これ幸いとどんな悪戯を仕掛けてくるかわかったものじゃないんです」 「でも、私達別に霊能者とかじゃないんだよ?そんなほいほい引っ掛かってくることなんてある?」 「訓練してないからこそ危ないんですよ。仰る通り、本来ならそうそう幽霊やあやかしを降ろしたりなんてできません。コインにいくら念じても動かないことが多いと思います。どちらかというと問題は、それでも稀に引っかけてしまうことがあるということと、訓練してないから帰すのに失敗しやすいってことなんです。よく聞くでしょ、こっくりさんが帰ってくれなくて困ったって話」 「う、それは……そうかもだけど……」  葉流は自分より年下の少女であっても、丁寧な言葉遣いと態度をけして崩さない。その上、眼鏡をかけていても損なわれないくらいに綺麗な顔をしている。成績も優秀で、体育が苦手なことを除けば完璧と言っても過言ではない。  だからだろう。翔子が葉流に憧れに近い感情を抱いていることを翔介はよく知っているし――多少不満があっても、彼女は葉流の言葉にはきちんと耳を傾けるのだ。それは葉流が、けして自分の考えを蔑ろにしないとわかっているというのもあるのだろう。どんな相手にも冷静に、丁寧に、理詰めで説明することができる葉流。女子に嫌われる理由などないというものだ。  まあ、あまり表情が変わらないこともあって、一部の先輩達には面白く思われていないようたが――それはそれ、ただの嫉妬というものだろう。優秀な人間が妬まれるのは、至極当然のことだ。
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