Two.疑心暗鬼の胸の奥

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その後、東徳さんの車の助手席にとりあえず乗り込むと、彼は手慣れた様子で車を発進させた。 家柄的に、彼の家にも専任の運転手は居るだろうが、話を聞いたところ彼自身が車の運転が好きらしい。 「いつまで拗ねてんだよ」 さっきからかわれてからずっと無言を貫き通していた僕に、東徳さんがチラッと横目を向けながら指摘してくる。 「す、拗ねてない。ていうかあんまり話し掛けないでよね、あなたと居ると発情の発作が起きやすいんだから」 「一緒に居るのに話し掛けるなはないだろ。それに、最近は免疫が出てきて近くに居ても発作は起きにくくなっただろうが」 「ふん」 「可愛くねぇな」 可愛くなくて結構だ、と思いながら彼を睨み付けるが、運転中の彼とは残念ながら目線は合わない。 いつも意地悪くからかってきて、口も悪い。 ……けど、こうやって間近で見ると、やっぱり綺麗な顔してるよな。 そう言えばさっきビルの前で彼とやり取りしていた時も、近くを通り過ぎていく女性達が皆、東徳さんにチラチラと目を奪われていたっけ。 長身で、美形で、オーラもあって……外見だけは確かにパーフェクトだ。 ……性格は悪いけど! しばらく走り続けた車は、やがて東京港や都心を一望出来るブリッジに差し掛かる。 時間的にちょうどライトアップがされていて、窓越しから外の景色に思わず釘付けになる。 やがて、せっかくだからブリッジ近くに車を停めて辺りを歩いてみるかという話になった。 ……夜景を見ながら二人で散歩なんて、まるでデートみたいじゃないか。いや、これは一応デートなのか……? 湧き上がったそんな疑問はひとまずさておき、車を降りて間近で見るライトアップは一層、綺麗に感じた。 そんな景色に目を奪われていると、後ろから 「花梨、こっち向け」 と東徳さんに名前を呼ばれる。 振り向くとーー突然、東徳さんから薔薇の花束が差し出されたから驚いた。 「……は?」
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