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薬も、全く効く気配がない。いつもならすぐに効いてくるのに……。
まずい。早くどこか安全な場所に向かわないと……。
そう思うのに、身体の力が入らない。上手く呼吸も出来ない。一体、どうしたらーー。
その時だった。
「何だ? この甘い匂い……」
トイレのすぐ外から、誰か男の声がした。
……気付かれた。
ゆっくりと外から開くドア。
入ってきた人物ーー黒髪で切れ長の瞳をした、高級スーツを見に纏った二十代後半位の長身のその男は、苦しそうに呼吸を乱す僕の姿を見て、目を丸くした。
「お前、相沢会長の息子……?」
そして彼は、こう続けるのだった。
「この甘い匂い……。
ーーまさか、会長の息子がΩ(オメガ)とはな……」
ーーずっと誰にも隠していたことが、こんな形でバレてしまった瞬間だった……。
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