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「んっ……」
突然の事に驚くも、嫌悪感はーー無い。
唇を奪われた瞬間に見開いた目に映るのは、瞳を瞑る東徳さんの綺麗な顔立ち。
東徳さん、睫毛長いな……
などとぼんやり思いながら、僕もそっと瞼を閉じた……。
ーー彼とは、初めて会ったあの日以降は、身体を重ねたりはしていない。
今日のようなデート?は何回かしているのだが、キス以上に及んだ事は一切無い。
勿論、迫られても拒否するとは思うが、そもそも彼の方からもそういった気配が無いのだ。
だけどこうやって甘いキスをしてきたり、薔薇の花束をくれたり……彼は一体、何を考えているのだろう。
と、そんな思考に気を取られた瞬間、東徳さんの舌が口内に侵入してきて、僕は思わず肩をビクッと震わせた。
「ん、んぅ……っ」
心臓が激しく脈打ち過ぎて、痛いくらいだ。
だけど、そんな鼓動も心地良く感じてしまう自分は、どこかおかしいのだろうか。
しかし。
「……は、ぁっ。こんな所で、駄目」
僕から唇を離し、彼の胸板を押して距離を取った。
そんな僕に、彼は「じゃあ……」と口にする。
じゃあ、の後に続く言葉を予想して、自分の全身が緊張して硬くなるのが分かる。
……しかし、彼から返ってきた言葉は、想定していたものとは違った。
「そろそろ飯でも行くか」
……飯?
「ちょうど腹も減ってきたし。いいだろ?」
「う、うん……」
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