Two.疑心暗鬼の胸の奥

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断る理由は特に無いが……。 ーー最近は、少しずつ彼とのキスにも慣れてきた。 だから……〝その先〟をいつ誘われてもおかしくない状況ではあると、少し前から覚悟はしていた。 勿論、誘いに応じるかは別問題ではあり、応じるつもりもない。 しかし、口が悪いくせに毎回やたらストレートに想いをぶつけてくる割には、キスで満足しているのかと、多少の違和感もあった。だって自分達は既に一度、過ちに近かったとは言え、身体を重ねているのだから。 今だって、ご飯ではなくホテルにでも誘われるかと思ったのに……。 東徳さんが僕を好きだと言ってくれるその気持ちは、一応疑ってはいない。いつも僕を意地悪くからかってはくるが、人を傷付けたり弄ぶ嘘は吐かない人だと、何となく分かるから。 ……そうなると、セックスには興味無いとか?もしくは、身体を重ねたあの夜、あんまり良くなかったとか……? いやいや、彼がセックスしない理由なんてどうでもいいだろ。誘われたって乗らないんだから。 ていうか、そもそも僕達の関係はこんな感じでいいのか? キスしたりデート(?)したり、一緒に食事したり夜景を見たり花束をもらったり。はたから見たら完全に恋人同士だ。 オメガとアルファだから、恋人同士にはなれる。 だけど僕としては……アルファの地位に頼らずに一人で生きていくと決意している僕としては、アルファの東徳さんと恋愛関係になるのはあまり良くない気がする。 様々な考え事で頭が埋め尽くされながらも、その後少しだけブリッジの周辺を歩いてから、再び車に乗って食事に向かった。
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